実相を捉えた経営方針とビジョンがあれば何度でも復活できる

takakuramachi

横川氏が76歳のとき、高倉町珈琲を創業した。

高倉町珈琲は、東京郊外に19店舗を出店しているカフェチェーンだ。この店の名物は、リコッタチーズが大量に入ったタネを銅板でふっくら焼き上げる「リコッタパンケーキ」。この他、ゆったり過ごせるよう工夫された店内がシニア層の人気を集めている。

横川氏は「楽しい場を作りたい」との想いで事業を行っている。これまでになかったものを提供して、お客様を喜ばせたいのだ。例えば、それまで入れ物に入っていた砂糖を安全面から小分けのスティック型に変えた。文字だけのメニューを写真入りに変えた。セントラルキッチンを作った。すべて日本初であり、横川氏の仕事である。

それまで私は、セントラルキッチンとは低コストと均一品質を実現するための仕組みだと思っていた。しかし横川氏は、高級ホテルで提供される料理を効率良く生産する仕組みと捉えていた。原材料にこだわり、一流シェフに調理を指導してもらっていたことから、志の高さが伺える。

横川氏の経営方針は、徹底した客目線だと言えるだろう。お客様の「こうして欲しい」という要望になるべく応え、必要以上に儲けないよう経営しているからだ。お客様の立場になって、入りやすく、座りやすく、注文しやすく、食べやすく、また来たいと思わせるお店作りを目指している。

実は横川氏は、ファミリーレストラン「すかいらーく」の社長兼創業者であった。しかし、お店が3000店舗を超えたあたりで客目線が行き届かなくなり、売上が低迷、社長の座を解任されてしまう。

その後のすかいらーくは、から揚げ店「からよし」をオープンするが、看板やメニューが酷似しているとして「からやま」を運営するアークランドから訴えられている。お客様を喜ばせるオリジナリティ・横川氏のマインドが失われてしまった結果だろう。

実相を捉えた経営方針とビジョンがあれば、何度でも復活できる。横川氏の創業は、そのことを教えてくれている。

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