佰食屋にみる内部留保の大切さ

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京都にあるステーキ丼のお店「佰食屋」。1日100食限定で料理を提供するコンセプトが大きな特徴だ。

代表の中村朱美氏によれば、どんなに売れていても1日100食に限定することで、「社員の働きやすさ」と「会社の維持」が両立できるのだという。

事実、佰食屋は飲食業界では珍しく「営業時間3時間半・残業ゼロ・週休2日制」を実現させている。

このことが多くのメディアに取り上げられたこともあり、佰食屋は全4店舗・社員12名・アルバイト12名にまで拡大していった。

整理解雇、そして閉店

ところがコロナ禍の影響により、佰食屋は2020年4月11日から3店舗を臨時休業し、その数日後、12名の社員を7名に整理解雇する。続いて2店舗を閉店させた。

中村朱美氏は、繁華街にある家賃の高い2店舗に引っ張られて会社が倒産する前に、2店舗の閉店と人員削減を決意したと氏のFaceBookで述べている。

なぜ雇用を守れなかったのか?

働き方改革に成功し、数々の賞を受賞し、各メディアで話題となった佰食屋だが、なぜ雇用を守れなかったのか。

恐らく、利益を軽視したからだろう。そう考える理由は3つある。

まず1日50食限定とした佰食屋1/2(ニブンノイチ)という業態のビジネスモデルを、中村氏は下記のように説明していた。

売上高(1食1000円×50食×25日営業)=125万円
家賃・材料費等=-75万円
————————————
夫婦の年収=600万円

このビジネスモデルには、利益や内部留保(会社の貯金)という考え方はない。

次に2020年1月20日の記事で、佰食屋のFLコスト(原価と人件費)が80%、2018年の営業利益は約600万円の赤字であったと述べている。

要するに利益率が極端に低い業態なので、内部留保がしにくい体質だったのかも知れない。

最後に2020年1月14日の記事で、中村氏は「内部留保は経営者の心の弱さと比例している」と豪語している。その上で、

もし予想もしない事が起きた場合は、従業員と共に問題解決に当たればいい。“従業員ファースト”の経営をしていれば有事の際には必ずや助けてくれる。

実際はコロナ禍で従業員を解雇したわけだが、もし十分な内部留保があったなら、雇用を守れたかも知れない。

天使が社長でも利益を考える

ドラッカーは「いかに私心のない天使が経営者であっても、利益には関心を持たなくてはならない」と述べた上で、利益のもつ機能を次の4つだとしている。

1.利益は成果の判定基準である
2.利益は不確定性というリスクに対する保険である
3.利益はよりよい労働環境を生むための原資である
4.利益は、医療、国防、教育、オペラなどの社会的なサービスと満足をもたらす原資である

今回の事例では2番目の「利益は不確定性というリスクに対する保険である」が、特に深く突き刺さる。

中村氏は業績悪化による人員削減を重く受け止め、今後は利益率を高めた働き方改革に取り組むとのことだ。

具体的には、現在3%の利益率を15%まで引き上げる。そのため細かなマニュアルを作って従業員の作業効率を高め、光熱費を削減する構えだ。

引き続き佰食屋の経営を観測していきたい。

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