最大ニーズに応えるのが、商売のあるべき姿

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いま漁業は「水揚げ量減少」「魚の消費量減少」「燃料費高騰」の三重苦に悩まされている。

羽田市場の代表である野本良平氏によれば、これからの時代は「獲った1匹の魚をいかに高く売るか」であるという。

羽田市場の取り組みを、流通・商品・価格の面から整理してみた。

空輸で流通革命

魚の輸送といえば、陸送が常識だった。羽田市場は、その常識を破って空輸を使う。

もちろん、トラックに比べて飛行機の方がコスト高なのだが、中間業者(地方市場・中央市場)を介さないことで可能にした。

これにより、魚が消費者へ届くまで2~3日かかっていたものが、その日のうちに届くようになった。

また羽田空港内に鮮魚センターを作ったことも、配送スピードを高めることに寄与している。

商品価値を高める鮮度管理

魚は釣って終わりではない。

血抜きや神経〆などの手間をかけることで、良い鮮度が保たれ、価値を高めることができる。

野本氏いわく「釣ったあとの鮮度管理が品質の8割を決める」。

また漁師と直接やり取りすることで、「いつ」「どこで」「だれが」「どのような漁法で」獲ったかまで分かる仕組みになっている。

このトレーサビリティが、万が一、品質に問題があった時の保証となる。

セット販売で利益率アップ

羽田市場の商品は、10,000円のセット販売のみだ。

セット販売の内容は、季節や漁獲量によって変動するので、指定できないようになっている。

この仕掛けが、羽田市場の利益率を高めていると言って間違いない。

まず客単価を増やすことに成功している。次に内容品が指定できないので、在庫を極限まで減らせる。

さらに配送作業や勘定が簡単になり、仕入れる箱の大きさも同じで良いので、各種コストカットにつながっている。

調和のとれた美しい戦略

これまで見てきたように、流通・商品・価格の各要素がお互いを高め合うようにフィットしており、他社には簡単に真似されない。

また魚が一番消費される年末年始に営業するなど、消費者目線を忘れていないことも重要だ。

イノベーションは、業界全体がコモディティー化する時、起こりやすい。羽田市場はその典型だろう。

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