なぜ中小企業と吹き出物は大きくなると潰れるのか?
「中小企業と吹き出物は大きくなるとつぶれる」という諺がある。
もしこの言葉が本当なら、世界に大企業が存在しないはずだ。
でも実際は違う。
調べてみると、要するに「無謀な拡大路線は失敗する」という意味だった。
つまり無謀でなければ、拡大路線は決して悪いことではない。
成長しない企業は、長期にわたって利益をあげつづけることはできない。同じ顧客、同じ製品、同じ市場にしがみついている企業には、大きな災いが待ち受けている。
フィリップ・コトラーのこの言葉からも分かるように、拡大路線を肯定的に捉える必要がある。
なぜ企業は拡大路線に走るのか?
いくつか理由がある。
まずは売上を伸ばすため。次に収益の柱を増やすため。最終的にはスケールメリットを活かし、利益率を上げるためだろう。
例えば、年商1億円のカフェを経営しているとする。他の地域に2店舗目を出せば、合計で年商2億円となる。
また昼はカフェ、夜はバーといった二毛作ビジネスにすれば、違った市場から収入が得られる。
そのほか、仕入れた食材を融通でき、多店舗展開による大量仕入れで原価を安く抑えられるメリットも受けられる。
このように拡大路線は、中小企業が中堅企業へ成長するために必ず通る道なのである。
拡大路線にもいろいろある
アンゾフのマトリクスによると、拡大路線には4種類あることが分かる。
■市場浸透
他社との競争に勝つことでマーケットシェアを高める戦略。
■新商品開発
新しい商品を現在の顧客へ投入することで成長を図る戦略。
■市場開拓
現在の商品を新しい顧客へ広げることで成長を図る戦略。
■多角化
現在の事業とは関連しない新しい分野へ進出して成長を図る戦略。
拡大路線に失敗する要因
経営資源(ヒト・モノ・カネ)の面から考えてみる。
まず急激な出店は、教育不足な従業員を現場で働かせることになる。また他の店舗を任せている店長と十分な意思疎通が図れないことが起きる。(ヒトの問題)
次に仕入れの取引量が増えて在庫を適正に管理できなくなる。また前述の教育不足により、商品の品質やブランドイメージが担保されない状態になる。(モノの問題)
最後に仕入・店舗・従業員など、多額の初期投資が運転資金を圧迫する。費用は確実に使われるが、将来の収益は保証されない。(カネの問題)
以上のリスクに備えていないと、キャッシュフローが悪化し倒産する。
拡大路線で失敗しないために
ヒトの問題は、まずマニュアルを整備し、ミーティングでフォローし続けなくてはならない。モノの問題は、容易に管理できるシステム(仕組み)を作る必要がある。カネの問題は、計数感覚を持ち、キャッシュフローを改善する。
売上が伸びてくると、一気にシェアを拡大しようとしたり、新しい分野へ進出したい誘惑にかられる経営者は多い。
攻めの姿勢でアクセルを踏み、拡大路線に走りたい気持ちも分かるが、まずは足場を固め、本業を確固たるものにしなければ、いずれ吹き出物のように潰れてしまうだろう。