斜陽産業を復活させるには
スキーは斜陽産業だ。なぜならスキー人口は、1998年の1800万人をピークに、2013年には770万人にまで落ち込んでいるからだ。
閉鎖されるスキー場が増えるなか、マックアースの代表取締役・一ノ本達己氏は次々と赤字から黒字へと転換させ、スキー場を再生していく。
一ノ本氏によれば「雪が降ってリストを回せばお客がくる時代があった」という。しかしスキーブームが去っても殿様商売から脱却できず、スキー業界は低迷していった。
イノベーションが起こるとき
スキーといえば「寒い」「レンタルや交通費にお金がかかる」「リフト代が高い」「料理がまずい」「ゲレンデの作法が分からない」「リフトから降りるのが怖い」「崖が怖い」などネガティブ意見が多い。
そして、どこのスキー場でも同じようなサービス体系で、差別化できていなかった。
このように業界全体がコモディティー化する時、イノベーションが起こりやすい。
一ノ本氏の例でいえば、ゲレンデにミニゴンドラを導入したり、保育士付きのキッズルームを完備したり、ナイターを夜11時まで延長したり、焼き立てピザや本格ラーメンを楽しめるようにした。
一ノ本氏は、お客様の視点を大切にし、スキー場のあるべき姿を追求したのだ。
イノベーションが成功するとき
一ノ本氏の改革が成功した要因は、彼の実家がスキー場のロッジを経営していたことや、自身が国体のスキー選手だったことが挙げられるだろう。
イノベーションを成功させる条件として、ドラッカーは次の事を述べている。
イノベーションほど、自らの強みを基盤とすることが重要なものはない。イノベーションにおいては、知識と能力の果たす役割が大きく、しかもリスクを伴うからである。
(中略)
製薬会社が口紅や香水で成功することはあまりない。イノベーションを行おうとする者と体質が合っていなければならない。
つまり一ノ本氏にとって、スキー場再生事業は強みだったのである。
他にもまだある復活した例
星野リゾートの代表取締役・星野佳路氏も経営不振に陥ったリゾート施設や旅館の再生で知られる。
温泉業界も旅館の作りや料理に差がなくコモディティー化していたところを、星野氏が地元の素材を使った特色のある料理に変えたり、日本の原風景を思わせる外装に作り替えた。
そして星野氏もまた、実家が温泉宿を経営していたので、強みにすることができた。
斜陽こそ今までとは違った切り口が求められている時であり、新参者にチャンスがまわってきている証拠なのかも知れない。
年商:180億円
従業員:660人
参考:カンブリア宮殿